湘南移住記 第二十七話 「だれもいない御成通り」

書く、という行為は過去の記憶を紡ぎ合わせながら、未来を作る。という言葉を思い出した。移住に至る経緯を書いて、たくさんのアクセスがあり、多くの人に読んでもらっている。

この移住記は私たちの未来を作るために書いています。読んでくださってありがとうございます。これを読んでいる人の日常にも物語があって、穏やかな日々を過ごしている人もいるだろうし、大変な状況の人もいるでしょう。移住をするという方はなかなかいないと思いますが、私の内から発する言葉が、読んでくださるみなさんの人生にいい影響を与えれますよう。人生は一度きりで、許された時間は貴重です。

クセの強い街

妙本寺を後にし、街に戻る。小雨がしとしと降り続いていたが、すこしましになってきた。女将に海を見てもらいたくて、由比ヶ浜あたりまで出ようとしたが、風もあるし寒いからやめた。

鎌倉でも随一の観光名所、御成通りを歩く。日本のカフェの草分けである〈カフェ ヴィヴモン ディモンシュ〉をはじめ、有力なカフェやお店が並んでいる通りだ。道は狭くて、いつも人がごったがえしているが、今はほぼだれも歩いていない。平日の朝だからだろうか。店も開いていない。関東も緊急事態宣言から開けたばかりだが、その影響もあるのかもしれない。鈴木さんから鎌倉もコロナの影響で多くの店が閉めた、と聞いたが御成通りもそうなのだろうか。店が開いていないのでよくわからない。

小ぶりなバーガーショップを見つけて、かわいいねえ、と言う女将。
バイト帰りにジャージで津山からそのまま鎌倉にきた
週5営業の理容ハッピー

理容ハッピーというお店を見つけた。いつもの御成通りなら見逃しいただろうが、なぜか目に付いた。くすんだピンクのカーテンに金色の字体がおもしろい。洗練された鎌倉のイメージは、メディアが作り上げたものだと思う。Web上の記事でもそこに乗っかったものも多い。理容ハッピーはメディアには取り上げられないだろうが、ずっと鎌倉で商売をし続ける説得力とリアルを感じた。こちらに移住してもこういう場所や人は取り上げよう。

気、と一言で済ますのはあまり好きではない。しかしながら鎌倉についてからというもの、どうも体が軽い。嬉しくて交差点でジャンプしてしまったほどだ。丹後山アパートメントのナルちゃんに言われたが、私にとって津山の気は重すぎるのかもしれない。前回の旅で感じたことでもある。笛田とか山の方に入ると、さらに気も体もが軽くなる。ここ数カ月、相続のゴタゴタでごちゃごちゃになっていた感情を、鎌倉の風が濯いでくれた。

町を観察していると、議員の立候補ポスターが面白かった。縦長のポスターに、若い議員がぴょこっと顔を出しているものもある。津山ではまず考えられない陽気さだ。津山を極陰とすると、鎌倉は陽の土地。牛窓のポマイカイ農園に集まった人たちに感じたが、海に集まる人は陽な人が多い。女将も陽の人なので合うだろう。

ひとつ意外だったのは、女将が鎌倉に合っていたということだ。へたすると、私より適合している。鎌倉に入ってからというものの、ずっとスイッチが入っていて、わけのわからないことを口走り続けている。楽しそうだった。鎌倉はよくみるとクセの強い街だ。アートも感じるし、女将の個性を受け入れてもらえそうだ。女将が鎌倉で店に立ったら、たちまち有名になるだろう。そんなイメージができる。

1人で旅をするのとはちがう、2人でいてわかる視点が面白かった。御成通りを歩いて、鶴岡八幡宮の参道である若宮通りに出て、ふたたび報国寺に向かう。

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