湘南移住記 第四十一話 「視察④」

時間は午前11時。約束の時刻より1時間早い。時間に対して小心者で、大概、約束の時刻より1時間早く着いてしまう。

三崎港への26号線、脇道から住宅街へ。ここは三浦半島の中でも、端の端っこだろう。家の前で掃除をしている女性がいたので、挨拶をした。こんにちは。返事をしてくれた。道に、水を撒いていた。

google mapで物件の位置は把握していたが、いくつかの家が入り組んだ場所にあったので、迷ったものの、10分ほどで辿り着いた。それでもまだ約束の時刻まで40分あったので、物件の前で、女将のおにぎりと、岡山駅西口のローソンで買ったプレミアムロールケーキを食べた。食べていると地元のおっさんに覗き込まれた。人の往来が多い。目の前に寺があって、墓参りに来ているようだった。隣はなにかの施設のようで、若い夫婦が出たり入ったりしている。

この物件で商売をするとなれば、最初は墓参りに来る人を相手に、テイクアウトで売ればいいだろう。大家さんにもこんな場所でカフェなんかできないと言われたが、井原市の三村珈琲店さんや、倉吉のmiepumpさんなど、人里離れてやっている名店は見てきたので、できないことはない。

大家さんとはZoomでやりとりする予定だったが、繋がらなかったので、Instagramの通話で連絡をとった。実際に物件を見て、生活をしながら、店をするイメージができた。連絡なかなか出来なかったので、大家さんには申し訳ないことをしてしまった。

ゆるい空気

内見を終えて、三浦を歩いてみることにした。坂をくだると、海が見えた。この日、初めて見た海だったかもしれない。海が背後にある交差点の風景は、心に迫るものがあった。ネットで見た葉山の風景に似ていた。写真の右の建物はカラオケ喫茶で、声がよく響いている。海のそばで歌うのは気持ちいいだろう。

そこから歩いていくと、〈OMOYA〉というデリの店があった。後で確認すると、グーグルマップにも表示されていない。一度通りすぎ、やはり気になって引き返す。今日はこれだけしかないんです、と300円のバナナシェイクを売ってくれた。横須賀からきたお客さんがいた。ゆっくり、時間が流れている。この空気感はとても好きだ。この白昼夢のような生活空間は、いまのところグーグルでさえ捉えきれていないようだ。

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