湘南移住記 第六十八話 「心の陰に」

もういいじゃないか、明日、津山に帰ろう。よくやった。引き返そう。深夜の一時、寝付けれなくて、明かりをつけた寝室で瞑想をしていると、こんな考えが巡ってきた。

本音、弱音

頭ではなく肚で考える。谷川俊一郎の呼吸の本で読んだ一節。頭で考えすぎて、焦った判断をしやすい私は、心に留めている。

その声があまりに強くて、本当に帰ったほうがいいんじゃないか、と体が動いた。直前に、女将が1年前、改装したばかりのhatisの画像をアップしていて、懐かしくなった。あれだけ津山の悪い部分ばかり見えていた私が、まさか望郷の念に駆られるとは思いもしなかっあ。

これではいけない。明かりを消して、ふたたび真暗闇で瞑想をした。ここで引き返しては、すべてが覆ってしまう。

静かに、焦りを鎮める。心のどこかで、hatisをまたやりたいという欲求があった。去年の夏に店を改装してから、3ヶ月もやれていない。少しずつ内容も改善していけたし、だんだんとお客さんも増えていた矢先だった。

三浦市で、また店を、会社を始める。新しく始めよう。そういうヴィジョンった。だけど、あの場所でやりたいという気持ちを押し殺してしまっていた。

そしてもうひとつ。三浦で、借りたこの家で、商売を始める覚悟が本当にできていたか。物見遊山になってしまっていなかったか。

再確認

肚をくくりきれていなかったことに気づくと、ここでやろう、と別の声が聴こえてきた。直感で、毎朝お祈りしにいく近所の神社にいる神様ではないかと思った。そこから、浮き足立った弱さがスーッと引いた。

もうひとつの自分というか、ふだんの思考とは別の、陰に隠れた弱さが耳のそばでそっと囁く。金銭的な不安からか、長らくの自己不信から来る不安か。

だが、ここで踏んじって前に進まないと、何も変わらない。縁もゆかりもなかった神奈川にきて、拠点を作るとこまできた。それだけでも大したものじゃないか。すべてはこれからだ。

一つ心に決めた。津山のhatisは、またやる。そのために三浦の店とECを始め、女将と回せるようにし、人を雇えるところまでいく。そうしてやっと経営者として一人前。珈琲にたずさわる者としても、その頃にはプロになれているはずだ。いや、なるんだ。

そして東京にも店を出し、成功させる。津山の同年代でそういう動きをやっている奴はいないはずだし、やすきがやったとなると刺激にもなる。

そのために今は働いて、お金を貯める。女将と合流して、珈琲の焙煎やスパイスカレーの技術をあげる。ビジネスに取り組む。三浦や湘南地域にコミットし、岡山とつなげる。

よし、明確になった。再確認重要。みなさん、私がブレたら叱ってください。

,
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。