湘南移住記 第七十八話 「亡父の夢」

夢を見た。実家にいて、布団で寝ている。意識はあるが、体が重く動けない。家中が薄暗くて、何人かいる気配がする。声でその内の1人は妹だということがわかった。

妹だけではなく、親族も何人か集まってきた。みんな、何か話している。家の中で、誰かがいる気配はひさしぶりだった。

目が醒める。三浦の、一人きりの家だった。アイフォンを見ると、夜の2時半を廻っていた。窓を開けていたが、蒸し暑くて起きた。

夢を反芻すると、父が出たことを思い出した。ここ一年、父の夢をみるとき、夢の中で父が死んだことを思い出せなかったが、いまみた夢では気づいた。気づいた瞬間、父は夢から退場した。

1年かかって、父の死を受け入れた、ということなのかもしれない。

1人で生活するのは、いつ以来だろうか。女将とはメールかスカイプで毎日連絡を取っているものの、画面越しだと何か伝わりきらないところもある。zoomで仕事をするのが当たり前になってきているが、業務をzoomで話すのはニュアンスが伝わりきらないではないだろうか。

寂しさもありつつ、寂しさを楽しみつつ。家と2つの職場の往復の状況なので、孤独を感じるヒマもないが。こうやって落ち着いて文章を書くのもひさしぶりか。独りの時間は必要だ。自分でいるために。この機会に、自分を深めておこう。

ただ、YouTubeを観るのにハマってしまっている。元カプコン社員の岡本吉起さんのチャンネルがおもしろい。柴田亜美の『ドギバグ』という漫画で存在は知っていた。会社員時代の仕事の話とか。元プロボクサー、世界チャンピオンの竹原慎二さんのチャンネルもかな。

スマホを離して、ノートを書いたり、読書に時間を割こう。今日は図書館でリルケの『フィレンツェだより』を借りた。日記を本にしているという点では、ブログの走りということだろうか。家の周りの風景や街に夕陽が沈んでいく描写が、絵のようでとても美しい。

いろいろ出揃う

マグロ屋のバイト先から冷蔵庫をもらった。店の人がわざわざ家まで届けてくれた。1人にはちょうどいい容量。これで生鮮食品を買うことができる。卵が食べれる。

女将に頼んで、箸と焙煎機を送ってもらった。箸は、津山市の商店街にあるkizouで買い求めてもらったもの。九州の作家さんがひとつひとつ手作りしたもので、大量生産の箸とは掴み具合が違う。こういう細かい部分で、生活の質が変わってくる。

焙煎機がきたので、やっと珈琲が始められる。まず、道具を集めなければ。ドリッパー、ミル、梱包用の袋。

店を出すために必要なもののひとつ、食品衛生衛生管理者の講習は、10月以降に取得できそうだ。2ヶ月の間に、内装も含め、しっかり準備しておく。

前回は行き当たりばったりだったが、今回は、やりたいことの根幹をまとめて、プランを練る。ロゴマークやデザイン面も固めておきたいし、これから私がビジネスを通じて社会をどう変えていきたいのか、どういうメッセージを発したいのか。どういう自分でありたいのか。明確にしておく。そこさえ固まれば、道は拓ける。

自分はインディペンデントな存在でありたい。かつ、自由であること。責任を背負って、自由になる。津山と三浦の多拠点生活はその始まり。そして、場所と人をつなげること。このストレスフルな社会に、チルをもたらすこと。CBDも珈琲もそう。いままでスポットが当たらなかったことに光を当てること。

喫茶トエム

三崎の〈喫茶トエム〉に行ってきた。有名な海南神社の近くにある、元漁師さんがやっている喫茶店。パフェ夏詣という、青いゼリーが入ったパフェを頼んだ。疲れた身と心に効いた。

夏の三浦は空がクレヨンで描いたように青く、心にも染みるようだ。通り抜ける風が、細い露地のひとつひとつを洗い流していく。いい場所に来たなあ、と思う。

忙しくしていると、自分を見失う。休みの今朝は家の掃除から始めて、環境と自分を整えることにした。睡眠時間が微妙に取れないので、昼寝を充分にした。

もらった冷蔵庫をペイントしよう。店の客室にする予定の部屋も、漆喰で塗ろうか。わくわくが膨らんできた。

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