湘南移住記 第八十七話 「こども、産まれる」

満月前夜。子供が産まれた。突然の出来事だった。といっても、人間ではなく仔猫。アストラッドが2匹の子供を津山で産んだ。朝、女将からメールがきた。

南町の家の一階は工事途中で、猫が床下を自由に行き来できるようになっている。床下は砂になっていて、3匹の猫が床下で用を足すようになり、一階中に臭いが立ち込めているという。DIYの練習に床をはずして改修しようかと話していた矢先だった。

2階で寝起きしている女将が起きると、1階から見知らぬ声がした。降りてみると、仔猫が1匹、床に横たわっていた。人間の掌に収まる大きさ。女将が見つけた時点でメールをもらった。朝の7時7分。

仔猫についていた胎盤は女将がハサミで切り取った。この胎盤は母親にとっては重要な栄養で、へその緒と一緒に食べるらしい。

母親のアストラッドの姿がない。声はする。どうも、床下でお産を続けているようだった。床にいたこどもが砂まみれだったので、床下で出産したことが推察される。目も見えず、仔猫自身で床上まで這い上れないだろうから、リプかマーレが連れてきたのだろう。

ここからは、スカイプでリアルタイムに三浦市と津山で、私と女将がやりとりしていた記憶だ。

しばらくすると床下からも仔猫の鳴き声がした。しかし、床下まで人間は潜れない。このまま放置しておくと衰弱してしまう。どうせ改修するし、女将に床をはがしてもらった。だが、怖がったのか仔猫の鳴き声が止んで、いる場所がわからなくなった。

私たちがら困っていると、リプが床下に潜って、颯爽ともう1人の仔猫をくわえて上がってきてくれた。なんてイケメンなんだ、リプ。

もう1人の仔猫はまだ胎盤がつながったままだった。アスも床上に戻ってきた。仔猫をアスの近くに連れて行くと、アスが胎盤を食べはじめた。最初はアスは仔猫に戸惑っていたが、不思議なもので、胎盤をたべると仔猫たちを護るようになってきた。本能でわかるようだ。

仔猫はアスの下腹部に吸い付く。その姿をみて、女将は必死に生きようとしているなあ、と呟いた。生きることとは、本来こうなのだ。生きようとすること自体が尊い。人生は苦しい、と人は言うが、それは間違っている。

2人の子猫は男の子と女の子。男の子は元気がいい。女将がヴィルゴと名付けた。乙女座の意。女の子には私が名前をつけた。ミウシャ。

仔猫は、1週間ほど経って、目が開くらしい。それまでが生きれるかどうかの分水領。神奈川でいっしょに暮らそう。

大所帯

しかし、引っ越しを前に家族がまたふえるとは。計7人の大所帯になった。これから横須賀に引っ越すので、まあ大変だ。今年は突然のことが起きてばっかり。たのしんでいこう。

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