祝祭の音楽 / Libro 『なおらい』

トラックメイカー/ラッパーのLibroが2021年、新アルバムをリリースした。缶詰に入った猫が黄色い蝶ネクタイをしている。かわいい。

Hip Hop On Covid-19

本作はコロナ禍の最中にアルバムは製作された。市井の人間のみならず、コロナはアーティストにも影響を与えている。まず生命線であるライブができない。ライブができたとしても、細心の注意を払わなければならず、払ったとしても社会的に批判の目に晒されることにもなる。ヒップホップにおいても東海で行われた波物語というフェスが批判を受けた。原因は、コロナ対策の行き届いてなさ。批判の大きさはヒップホップを越え、社会的な問題にさえなった。

だが批判をした多くの人がフェスに参加したアーティストを知らないだろう。閉塞的な状況から、MCバトルにより大きくなったヒップホップだが、肝心の中身のことまで知られてないような、歪さは感じる。

本アルバムの楽曲は2019年から製作が開始された。だが製作途中にコロナが蔓延しはじめ、人々を取り巻く状況が変わった。一曲目『ハーベストタイム』のリリックの内容も、コロナ禍に併せて変えていったらしい。

単純な終わりではなかった 
物語には続きがあった
時はきた
いまハーベストタイム

『ハーベストタイム』より

新たな収穫

Libroといえば『雨降りの月曜』が有名だが、2010年代以降の楽曲はより音楽的に豊潤になった。サンプルのワンループだけで良かった90年代よりも、現在のヒップホップは音楽的に進化している。

『ハーベストタイム』はLibroの新しいクラシックだ。2曲目『シグナル(光の当て方次第影の形』まで一つの曲のようになっていて、おそらく生演奏を加えたフックが気持ちいい。NujabesとUyama Hirotoのセッションのようだ。

『気が散るものを遠ざけてチル』はコミカルなイントロからフェンダーローズのサンプルを使ったメロウなバースに入っていく。かなり気持ちのいい曲。

Libroの軌跡

また、過去のアルバムもすべてサブスクで解禁にになった。『拓く人』、『風光る』もクラシックだ。そういえば一時期、9sariやブラックスワンと活動していたが、今は自身のレーベル・AMPED MUSICで活動しているようだ。

『雨降りの月曜』が収録された『胎動』

98年にリリースされた『胎動』の頃は繊細なリリックと固い韻が目立っていた。感受性豊かで大変だったのだろう。この頃から「トレンドを追うのは面倒」と歌っており、トラップから離れた今のスタンスは変わっていないらしい。

しばらくはリリースを控えていたが、2006年にはkeycoとのユニット、fuuriとしてもアルバムを出していた。こちらもメロウで素晴らしいアルバム。

しばらくはラップから遠ざかっていたが、LibraからリリースされていたDJ TakumiのMix CD『&』にエクスクルーシブでバースが収録されていた。「じゃあ、ちょっとだけ」と断ってラップに入る様がとても大人で、かっこよかった。今ではたくさんLibroのラップが聴けるので、幸せな時代だ。

話は逸れるが、DJ TakumiのMix CD作品は素晴らしかった。紙ジャケで、ジャズの名盤からアートワークをサンプリングしていた。いつかどこかで目にかけたら、手に入れたい。

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