湘南移住記 第102話 「カギロイ」

また問題が発生した。詳しいことは省くが、これから借りる物件で店ができないかもしれない。それでどうしようか再び悩んだ。

女将に言われたが、なにかしらロックがかかっているのだろうか。天からここでやんなと示唆されているのか。やっぱり津山に戻ってやった方がいいのだろうか。

立ち戻ると、遺産相続の件でもめて、最初は津山に二度と戻らないつもりでいた。が、転じて津山でも店ができることになった。だから多拠点生活をすることにした。

今の気持ちとしては、私はこちらで勝負したい。今の実力では横須賀でも不足している。言い換えると、私に成長の余地ができるということ。成長しないと残れないから。

また、津山や岡山のいいものをこちらで紹介できるし、逆もまた然り。

しかし、それでも迷った。女将は携帯が止まって出れない。今帰ったらいままでなんだったのか、ということになる。いや、意固地を通しても仕方がない。

こっちにいたいという気持ちと、どうにもならないような現実との狭間で揺れた。

はるかぜ

午前中、三崎の店に寄っておきたいと思った。なるべくお金は使いたくないが、縁は縁だ。移住の人がやってるぽい、〈うどん はるかぜ〉に行った。

三崎町商店街。このあたりを歩くのもあとすこしだ。

〈うどん はるかぜ〉さんは金〜月曜日までしかやっていない。行けるチャンスはここだ。

店の前に看板が立ててある。12:00開店の3分前。入口で待っていると、女性のスタッフさんから「予約の方ですか?」と聞かれた。いえ、通りすがりの者ですと答えた。開店まで少し早かったが入れてくれた。私の入店後すぐに本当の予約の人が入ってきた。

ネットの記事を見てみると、こちらのご主人は独学でうどんを学んだようだった。私も一応、水路珈琲の竹内さんに珈琲の手ほどきは受けたが、体当たりでやっていくことがほとんどだった。

カウンターから、ご主人の仕事の様子を見ていた。顔が真剣そのものだった。この商売で家族を食わしていく、という気迫があった。ネットの記事を見てみると、ご主人は元カメラマンで、東京やニューヨークで活動されていたようだった。

どういう経緯でうどん屋をすることになったのだろう。このメニューを見ても感性は見て取れる。カメラマンから、独学でうどんを作り上げ、もしかしたら縁もゆかりもない土地に来てイチからやったというのは、相当の苦労に違いない。

仕事中の顔に、それが感じ取れた。

カギロイ

一度、横須賀の物件に行って間取りの寸法を測りに行った。もう一度保健所へ確認しにいくためだ。契約の手続は29日だが、使ってもいいと大家さんの許可を取ってある。

晩から横須賀の街中へでかけた。今日は米軍の空母がきているので、アメリカ人がよく通っていた。

ふと思い立って、汐入の〈カギロイ〉さんに行くことにした。Twitterで物資を募集したら、声を挙げてくださった。そのお礼も兼ねて。序でに物件のことも相談してみよう。

ドリンクメニューを見ると、国産のワインが取り揃えられていた。しかも一杯が500円程度で、高くない。店主の松田さんの、意図が感じられた。長野県のブラッククイーンを頼む。

付け合わせにサラダを出してくれた。このサラダが美味しかった。黒板のメニューに横須賀野菜のオリーブオイル焼きというのがあったので、横須賀の地の野菜だろう。津山の野菜も美味しかったが、横須賀の野菜も美味しい。華やかかつ爽やかだ。

松田さんに店のことを相談したら、まずやってみたら、ということになった。横須賀の基準は厳しいようだが、一度やってみて、ダメなとこはその都度直していけばいいと。たしかに。

次に、牡蠣のオイル漬けを頼んだ。これも旨かった。そこに敷いてある玉葱も爽やかだったし、ピンクペッパーをふっているのも小技がきいている。

話を聞いていると、〈カギロイ〉では、横須賀の旬な魚や野菜を使っているようだった。

私もhatisでは津山の野菜を意識的に使っていた。横須賀生まれ育ちの松田さんも、横須賀を大事にしているということなのだろう。

料理をしながら、お客さんに気を配り話をする。松田さんの仕事振りもまたかっこよかった。仕事を楽しんでいる様子が伝わってきた。

お店をするにしても、それぞれに背景がある。目的も違う。料理だけでなく、店をしているその人そのものを味わいに行くのだろう。自分も、来てよかった、と思って頂けるような店づくりをしよう。

ひさしぶりに贅沢をしたが、お礼もできたし、学びもあり、決意もできた。松田さん、ありがとうございます。

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