湘南移住記 第152話 「横浜の雪」

火曜日。痛みはなくなったが、体がだるい。週末に行った改装の疲労も残っている。仕事を休もうかと思った。

しんどいが、痛いよりはマシだ。休みたかったが、改装費を稼がなければならない。自分に言い利かせて出勤した。

幸い、仕事自体はさほど辛くはない。体がだるいくらいならこなせる。重い肉体を椅子に預けて、デスクワークをする。

驚いたことがあった。昼頃、突然雪が降り始めた。横浜で雪を見るのは初めてだった。

鎌倉の雪景色と、都会で見る雪は違う印象だ。無機質で、ロマンチック。見る人で感じ方が違うだろう。しかし、おかしな天候だ。

4月のシフトが出た。4月の2,3日にプレオープンする。以降、土日の営業から始める。4月の平日はこの仕事。営業許可をとるために保険所に行かなければいけないので、いくつかの月曜日に休みをとった。

5月以降の平日の仕事も探す必要がある。だが、商売だけで食べていく方向に思考を向けなければ。目標を忘れないようにしよう。

祖母に「人生は思い荷物を背負って山を登るようなもの」と教えられたが、まさにいまそれを体感している。一歩ずつ一歩ずつ重く歩んで、やっと登ったかと思えば、また次の山。

とっくに次の次の山にたどり着いている人も見える。だが、もうあまり気にしなくなった。人と比べて焦っても仕方がない。というか、まるで意味がない。私のことを笑う人もいるだろうが、応援してくれる人もいる。手を貸してくれる人もいる。

ここまで辿り着くのにさえ、失うものもあったし、人に助けられてきた。

遅くとも、辛かろうとも、今日もまた一歩か。辛いとか言っちゃいけないな。これを楽しむようにしよう。

お返し

雪が降った日の横須賀中央駅

帰りの電車で、フラフラしている人も見かけた。夕方5時台でもう酔っ払いか、と思ったが、どうも様子がおかしい。

40代の単発の男性で、かなり巨漢。ドアにもたれかかり、眠そうだった。膝から崩れ落ちそうになったのを見かけ、座席から飛び上がって声をかけた。

実は声をかけるのも怖かったのだが、先週、尿管結石で苦しんでいる私を助けてくれた職場の人たちを思い出した。今日も「大丈夫?無理しないでね」と声をかけてくれた。

見知らぬ地で、頼れる人も身内もいないし、病気になると不安になった。だが、人間は人間で、みんな助けてくれる。

その優しさを今度は私が返す番だった。

男性は私の問いかけに最初答えなかった。立ちながら眠っているようだった。崩れ落ちないように、傍に立っておく。汐入駅に着くと目覚めたので、「大丈夫ですか」と声かけをした。すると、今度は返事をくれた。ちょうど、駅に人が降り、空席ができたので、

「よかったら席に座ってください」と促すと、ありがとうと座ってくれた。大丈夫そうだったので、私は横須賀中央駅で降りた。

試作

仕事を終えて、帰宅。県立大学駅のホームに雪が残っていた。

昨日のスパイスカレーの試作品の残りを食べる。トマトの分量がまだ多すぎた。酸味が強すぎてうまく調和してくれない。

勘を取り戻すために、スパイスと材料を最小限にして作る。珈琲の焙煎と同じで、とにかく数だ。

本当に店ができるか不安ばかりだったが、やっとわくわくし始めた。お金がだいぶら減ってしまったが、働いて取り戻せばいい。

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