湘南移住記 第157話 「欲求」

日曜日。ここ何日か晴れ間が遠ざかっている。どんよりして、大気が重い。

改装の作業をしようとして、止めた。体力がまだ万全に回復していない。中途半端にやるよりはむしろ、きっちり休んだほうが方が進むのではないか。

小さくできることをした。片付けと掃除。やっと仕上げをやっているような気分になって、嬉しくなった。

道具

珈琲の抽出の練習。3回する。ドリッパーをOrigamiドリッパーからコーノ式に変え、1週間。ようやく感覚を掴め始めた。津山のhatisで出していた段階まで戻せている。一投目にブラックホールのような円を描く、あの感じ。あとは珈琲豆に吸い込まれていって、成分を抽出する。

ミルからグラインダーに変えて、挽き目が細かく調節できるようになった。以前より粗めに挽いている。成分をしっかり出そうとし過ぎていて(origamiドリッパーがそういう特性だった)、濃くなりすぎていた。

コーノ式はV60のような螺旋構造ではないので、ストーンとそのまま落ちる感覚。スッキリ出せるから、粉もそこまで細かくしない方がよさそうだ。

挽き目を6ミリにして、ネルドリップのように点滴で抽出すると、すごくうまくいった。出したい風味が出せている。粗めのほうが香りがよく出せる。

珈琲の風味は、生豆の質が6、焙煎が3、抽出が1と聞いたが、すべての要素が連動していないと美味しい珈琲はつくれない。

道具を変えると微妙に感覚が変わってくる。Portで竹内さんに教わったが、人間が道具に合わすことが大事。道具の性能を最大限に引き出せば、いいものができる。

朝食は、生姜と醤油で焼いた鰈、アボガド、白菜のとう、納豆、イカの塩辛。夕食は軽くして、油菜とパプリカの炒め物。パプリカは藤沢産。韓国産でないパプリカを初めて見た。小ぶりだが、甘味がほどよい。油菜は茎がしっかりして本当に美味しい。

珈琲を啜りながら音楽を聴く。SportfyにMuroがピックアップしたプレイリストがあり、そこからハワイアンAORのコンピを見つけた。選曲が素晴らしい。

横須賀は山を削って出来た街で、私が住んでいる富士見町も、入り組んだ迷宮よようになっている。庭の柵から複雑な街並が見える。人生の辛苦が詰まったような甘い音楽に、しばし聞き入りながら外を見ていた。ゴミを咥えた烏が外の柵に止まった。

ここまで過ちや間違いだらけだったけど、音楽たちはどこかで私を肯定してくれる。

コインランドリーで衣類を洗濯。安浦町をすこし散歩する。写真をいくつか撮る。コインランドリー用の小銭をつくるために和菓子屋でお菓子を買う。それだけで疲れた。

活かし活かされ

日野晃先生の動画を見ていると、人間は他人との関わり合いの中で生きる、ということがわかってきた。

例えばある人がサッカーの世界ナンバーワンを目指すとする。同時代に、その人を凌駕する才能が出てくると道のりは厳しくなる。

例えばメッシでさえ、バルセロナからPSGに移籍してからは想ったような結果を残せていない。突出した個でも、組織に適応できなければ、力を発揮できない。

社会を他人の塊だとする。私という個人は成す術がない。他人の欲求の流れを読み取って、自分のやりたいことをあてはめていく。横須賀でカフェを始め、どう受け止めてもらうか。

今まで自分が仕事がうまくいってなかったのってそこだよなあ。今もなんだけど、「こう扱ってもらいたい」というのが強すぎる。気を遣われているのだから、私も相手を慮れるか。

欲求の強さと流れは大勢決まっているから、力点を利用してスッと入っていけるのではないか。合気道の達人の動画を見てそう思った。無理やり力づくで入ろうとするとへずまりゅうのようになってしまうし、それは嫌だ。

まず自分の軸をしっかり持つ。ここが大切。そこから、時代を読み取る。人は今なにを求めているのか。力点を見つけて、大きく引き寄せる。

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