湘南移住記 第182話 『日々』

木曜日。

予報によると午後からは雨だったが、ゴールデンウィークに開店した〈たべことや みなと〉に行くことにした。

私が三浦にいるとき、〈たべことや みなと〉を経営しているあかりさん、かえでさん姉妹はトライアルキッチンで出店していた。2人は東京からの移住者だった。

私は、店に行き、2人と話すようになった。三崎の街中でも何度か会ったりした。思えば、三浦生まれ育ちの人とばかり知り合っていたので、移住者と知り合うのは珍しかった。

三崎に店舗を見つけて、出店できそう、と聞いていた。私は横須賀に移ったので、この3、4ヶ月は会っていなかった。

三浦の窓から

ひさしぶりの三崎。佐野町のバス停から三崎港へ。まちがえて三崎口駅までのバスに乗ってしまった。そうすると、三崎口駅からさらに三崎港へのバスに乗らなければいけなくなり、通算の料金が200円ほど高くなる。

バスに揺られながら、三浦の街並を窓から眺める。田んぼあり、穏やかな風景がつづく。天気が晴れていたら、富士山が望める。

いくつかの大型スーパー、ガソリンスタンド。多くの空き店舗。警察署。民家を改装したお弁当屋さん。和菓子屋さんも多い。長い長い坂道に、町が詰め込まれている。小さな港町に、5月の重い空が覆い被さっていた。

三浦の風景を見ていると、感傷的になりそうだった。元女将がいたころを思い出してしまった。

去年から今まで、ジェットコースターのように出来事が過ぎ去った。

1年がまるで4年間分はあったような体感だった。

スマホで、ちょうど一年前の今頃の日記を見返した。三浦への単身視察が終わり、さあここから移住だ、というところで、財布を落としてしまったところだった。キャッシュカードが使えず、当時、津山で暮らしていた家の電気が止まってしまい、精神的に参っていた。

ああ、そうだったなあとバスの最後部で思い返した。隣には迷彩服を着た男と、その彼女らしき女性が座っている。

色めき立っているのが観光客で、静かに座るお年寄りたちは地元の人。京急バスは満杯だった。

当時の私は、状況に対応しきれず、自分のことしか頭にないようだった。文体にその態度が現れている。

Here Is Happiness

振り返ると、自分の行動はどうだっただろうか。焦って、元女将の気持ちが汲めていなかった。

みんなで幸せになれるように行動していたつもりが、そうではなかった。

顧みて、結果は必然だった。

自分の行動や感情を客観視すべきだった。相手と自分が見えていなかった。

今も焦って、そうなのかもしれない。

入院やオープンの時期は、冷静に判断する。

最後に会ってから半年。連絡をとってから3ヶ月。とても悲しい日々。元女将と猫たちの存在の大きさを思い知った。

そして、津山駅前の家で暮らしたあの日々が、とても幸せだったことも。

体調を崩し始めたのは今に始まったことではなく、相続騒ぎが起きてからだった。

三浦に来るとエモーショナルになるのは、短かった三浦での日々もまた幸せだっただからだろう。

去年の今頃まで、緊張やストレスのあまり内臓が痛かった。夜毎に心臓も痛くなる。早く津山を出たい一心で行動していた。

疲弊した心身を、三浦の穏やかな環境が癒してくれた。受験で嫌な思いをした私を、癒してくれたのも神戸の伊川谷だった。

だから、この横須賀の日々も、後で思い返すと幸せなのだろう。今は苦しいけど、いずれ花開く時がくる。

健康に留意して、感謝をし、一日一日を大切にしよう。よくなってくる。豪運が訪れる。

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