湘南移住記 第204話 『江ノ島に』

火曜日。つかれた。お腹がすいたが、夕飯をつくる気力が起きない。今日の分に残しておいたとつもりのおかずが、昨日食べ切ってしまっていたことに気づいた。茶碗一杯分の玄米だけある。面倒だ。夕飯を食べずに寝てしまおうか。

それでもお腹は減るので、佐野町の京急ストアにでかけることにした。外は涼しい。今日の昼は暑かった。

行き道のコインランドリー前にあった家が解体されてなくなった。玄関に、コンクリートのハリボテがあった家だ。家一軒なくなっだけで、道が広くなった印象がある。風通しがよくなった。

9月も半ばに差し掛かった。やることの目白押しで、月日があっという間に過ぎていく。蝉の声もついに聞かなくなった。心地いい鈴虫の音色が秋風とともに響いている。

道中、夜の七時だというのに工事をしている人たちをみかけた!「〜をくれ!」と威勢よく道具を仲間に要求している。工事をしている隣家の人が心配そうに覗き込んでいる。こんな時間に、近所迷惑ではないのだろうか。

佐野町で惣菜の春巻きを買った。40%引きになっていて、5個入りで180円。浦賀の京急ストアは50%引きになるが、佐野町の京急ストアは40%が限界値だ。

惣菜はふだん買わない。自分が調理した方が安くて美味いものが食べれるから。だけど、今日は特別に許そう。

帰りがけ、工事の騒音は止んでいた。現場の前で、従事していた若者2人がジュースを飲んでいた。こんなに遅くまで働いていて、偉い。

春巻きが大好きなのだが、時間が経っていて老婆の肌のようにふにゃふにゃになっていた。

玄米と、30%引きになっていた北海道産大粒納豆、老婆の春巻き、キャベツにニンニクとリンゴ酢を合わせて食べた。キャベツは先週、西上さんが旅行に出かけた長野県産。三浦産よりさわやかな味わい。もちろん、どちらの良さもあって、どちらも美味しい。もっというと、農家さんによって風味も変わってくるだろう。

やっと

11日にお店をプレオープンしました。とはいっても、できていないことのオンパレードで、試運転しながらこれから仕上げていかなければいけない。お店っていうか誰かんち、みたいな状況。

西上夫婦がきてくれた。奥さんが看板をつくってくれることになった。ありがたい。

なんでも屋のマツダくんに玄関付近の草刈りを頼んだ。まるで別の家のようになった。

スパイスカレー。オランダ産ゴーダチーズをベースにつくったポークコルマと、桃とカルダモンのカレーのあいがけ。副菜はキノコと胡桃のアチャール、無塩アーモンド。大阪の〈コロンビア8〉さんリスペクトでししとうをのせた。ししとうは三浦産のもの。

8月は毎日カレーの練習に明け暮れた。前回に西上さんに食べてもらったとき、調和ができてないと指摘され、探究を始めた。

AIによって素材の組み合わせをみつけるフードペアリングを駆使して、さまざまな食材を試した。が、別の友人に「AIに頼るなんてお前らしくないよ」と言われ、1ヶ月の検討をすべて脇に置いた。

とはいうものの、midjourneyを使い、AIで生成した画像をブログで実験的に使いまくってんだけどな、俺。

AIの発想、私の発想

美咲町で、フランス人ばかりいるカレーコンペティションで出した時のレシピを再現しようとした。チーズと生クリームで濃厚に風味を出すカレー。珈琲でいうと、エスプレッソのような。

だが、ひさしぶりに多人数分を仕込むと塩加減がうまくいかなかった。塩も〈海の精〉という、日本伝統の精製方法でつくられているものに変えた。人工的な精製塩だと、塩味だけ抽出されて、味が不自然になる。海の精は、強いが、やさしく、ほかの素材と調和しやすい。体が欲しがる塩。

ただ、つかってみると、濃厚なのか、いままでの感覚より強く塩味が出てしまっていた。

検討ちがいにならないようにすすむ

くわえて、質はいいのだがどうも原価が高い。玄米も兵庫県産の無農薬米にアップグレードする予定なので、他の塩と組み合わせて使う必要がある。

試行錯誤のおかげが、西上さんからは合格ラインが出してもらえて、安心した。「前と変わったね」と言ってもらった。

1ヶ月向き合って、野口さんが言うところの分量の配分に注視して調整を続けた。たしかに、前の店より良くなっている気がする。

これが毎日営業できて、カレーを作り続けれることができれば、さらによくなれる。

珈琲はインドネシアの中煎を出したが、自分でもあまり納得できなかった。珈琲の焙煎とどう向き合うか考える。

江ノ島

今日は半日休んで鎌倉に行った。心の疲れを取るため。こっちに移住してからまだ江ノ島に行ってなかったので、稲村ヶ崎から江ノ電に乗って江ノ島まで向かった。

江ノ島に行かなかったのは、元女将と一緒に行こうとしていたからだった。

このところオープンの準備でうまく忘れられていたが、ふと思い出してしまった。1年前の3月、2人で江ノ島に来た。

一緒に猫を見た駐車場に行こうとしたが、どこか分からなくなっていた。埠頭にたどり着いて、いい加減、心の決着をつけることにした。感謝が抜けていた。

やっと、最後のとっかかりが外すことができた。

幸せを祈る。

新しい段階までようやく漕ぎ着けたので、これからを考えることにした。

そうすると、景色が見違えるように明るくなった。心の作用というのはどうもおもしろい。

藤沢を経由する。1年ぶりに藤沢にきた。駅の南に新しい珈琲屋さんが出来ていた。この店に引き寄せられてここに来たのだろう。店はオープン2日目らしかった。どこから来たんですか?と店主さんに聞かれると、気づいたらここにいましたと答えた。エチオピアのアイスコーヒーを頼んだ。美味い。

別れがあれば出会いもある。これからまた出会いがいっそう増える。その度に自分も変わっていくのだろう。

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